空



第二話 傘○山を知る。

 Y先輩の隣に乗って、深夜の傘○山の練習コースへ。

ストップウォッチを渡され、タイムを取るように言われる。
左手をピラーのグリップへ、右手はストップウォッチを持ったまま
ドアグリップを握るように指導を受ける。
通称、おさるのかごやスタイル。ラリーナビゲーターは
最近まではこのスタイルは必ず知ってました。

「突っ込む瞬間は足を踏ん張るように。」

クラッシュ経験の無い(それどころか普通にしか車に乗ったことの無い)
私には、興奮も、恐怖も何も無く、ただ眠かったことを覚えている。

真っ赤な三菱ランサーターボ、いざ発進!すごい加速!!

発進して最初の右コーナー、ブレーキングからいきなり砂に乗って
私のいる左側からガードレールに接触!コーナーレンズが散った!

Y先輩「誰や!こんなところに砂撒いた奴は!」

誰もわざわざ砂なんて撒くわけは無い。
私は自分が置かれているとんでもない状況をやっと把握した。
しかし、降ろしてはもらえない。
約3分の軌道の無いジェットコースターの中で、
「とにかくこの人の車から降りないと、、、」と考えた。

上りきったところで、一緒に来ている数台の先輩たちの車を待った。
このとき、シビックバンで上ってきたF先輩に気が付いた私は
「F先輩、下り乗せてください!」と頼んでみた。
F先輩は、やばそうな人の多い自動車部では、見た目も言動も
とても大人しい人だった。しかも車はシビックバン。
「いいよ。」と優しい返事が返ってきてほっとした私。

ところがいざ下り始めると、
F先輩は独り言をつぶやきながら走るのだった。

「ここでブレーキを踏んだら負けなんや」

心なしか下りだというのに加速しつづけているシビックバン。
そして下りの左コーナーで加速しながら、速度超過のため
アンダーステア(ハンドルを切っても曲がらない状態)を起こし
見事まっすぐ森の中へ。
ぎりぎりまでブレーキを我慢しただけあって豪快な落ちっぷり。
幸い怪我は無かったが、車は足回りを損傷。

F先輩「あー明日学校行けなくなった、、、」

私は自分が今どこに連れて来られたのかもわからず、
ただひたすら早く下宿に帰して欲しいと思っていた。
でも誰の車に乗ったら安全に帰れるのだろう、、、

その後も何度も何度も諸先輩方の危険車両のタイムを取らされ、
私の中で少しずつ何かが壊れ始めていた。

「俺のほうがこの人たちより上手いに決まってる、、、」

そうして私は後日この山に一人で来ることになるのであった、、、

続く。

あの頃サウンドシリーズ A ホイットニーヒューストン

F氏のシビックバンで鳴っていたのがこれ。とってもおしゃれで、
とてもいい人で安全に見えた。
ところがくだりを走るときにテープをチェインジ!
荻野目洋子の「Dance Beatは夜明けまで」に替わり
ショックを受けた。

あの頃マシーンシリーズ A TE71カローラ レビン(写真はスプリンタークーペ)

当時の若者の憧れの中古スポーツ車。
直線美のストイックなスタイルと、当時としてはばかっ早だった
2TGエンジンの組み合わせで、ダートトライアル、ジムカーナ
ラリーと、どのジャンルでも上位を占めていた名車。
クラブではせんせい、しんいち、そしてEM2も乗っていた。
ハンドルは鉛のように重かった。

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第三話 当時の走りは、、、


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