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樋口鍼灸院自動車部外伝2 〜スタッフオンジムカーナの準備中に。


※この物語もフィクションです。実在の人物や地名が混在しますが、現実世界と混同せずに、お楽しみ下さい。

<プロローグ>

 どうして、スタッフオンジムカーナなのか… 23年くらいやってきて、ふと考え直す。
その頃、俺達は若かった。唯一の財産といっていい、それぞれの愛車になけなしの銭を
注ぎ込んで、 それこそ、「俺の走りを見てくれ〜ちゃららちゃららら」みたいなノリに近かった。
 やがて仲間は増えて、競技に行く連中も増えた。自らもラリーストを自称するようになり、
イベントの目的は、競い合いから、親睦会へと変わってきた。
 やがて、結婚、出産、転勤など、様々な事情で降りていく仲間が増える中、次の目的は
新しい仲間の獲得と、若返り、即ち、ヤングの獲得だった。
 これは今も続いているが、今年新しい目的が加わった。
ラリーをやる仲間を育成する、というものだった…

<魔法少年>

 俺の名前は御前マジカ。三重県にある男子高校、シースター学園の2年生。趣味は車。
 その日俺は、学校帰りに立ち寄ったパワーシチィ四日市で「すがけや」のラーメンを食いながら、
妄想していた。
 「俺、将来は、システムエンジニアになって稼ぎまくって、出初の86買って、レースに出て、
かわいこちゃんと付き合って…」

 と、ラーメンをすする俺の足元に、突然小汚いウサギが現れた。

「僕と契約して、魔法少年になってよ…」

 うさぎが喋ってやがる… 俺は、冷静にあたりを見回し、そのうさぎの耳をつかんで、
目をあわさないようにしながら ゴミ箱に捨てた。

「君は、システムエンジニアになりたいんだろう?僕と契約してくれたら、君の夢を
一つだけかなえてあげるから…」
 ゴミ箱からうさぎの声が聞こえる。幻聴だ、ありえねぇ。俺は店を出ようと立ち上がった。

 と、その時、あたりが一瞬真っ暗になり、突然異様な風景が現出した。
 そこいら中に膨大な量のどこかで見たような数字やコマンドが溢れている。
これは…DOSじゃねぇ。学校で少しだけ習った、コボルじゃねぇか?

 「あ〜、やめてくれよぅ」さっきのうさぎの声がする。振り返ると、バットマンのような
真っ黒ないでたちの男がうさぎの耳を持って振り回している。
 俺は、目をあわさないようにしてその場を去ろうとしたが、出口がわからない。
「やめろ!」突然上のほうから声がして、アフロヘアに学ランの上着、
何故か下半身はズボンを穿いていない 競泳水着姿の虚弱な男が飛び降りてきた。

 マジデだ。同級生の矢目手マジデが、突然現れて、先ほどの黒い男と対峙した。

「マジデ!お前どうしてそんな格好で?」
「今の俺は、シースター学園のマジデじゃやない。魔法少年、マヂデなんだ。
ついでにこれは、競泳水着ではない。パンツでもない。ズボンなんだ。大丈夫だ。
お前のコボルはもう時代遅れだぜ。これからは、VBなんだ。死ね、 バードマン!」

 マジデは、その男に向かって、手にしたワイヤレスマウスから、光線のようなものを発射した。
バードマンと呼ばれたその男は、ひらりと身をかわしつつ、マントの中から次々と
アニメフィギアやドールを取り出した。

「わかっていないな、若造。このコマンドはだだのコボルではない。ハイパーコボルなのだ。
詳しくはコンピューター学園ハルに入校して聞くがいい。
  さあ、俺の時間と引き換えにヤフオクから生まれた我が妹達よ。
あの男を永遠に時間の無い世界へひきずり込め」

 と、夥しい数の萌えるフィギア達が、マジデの体を瞬く間に埋め尽くした。
次々とフィギアがマジデを襲う。 フェイトが、ホロが、リーネちゃんに サーニャまで… 
なんて量なんだ!いったい何万円注ぎ込んだんだ!?

「どうだ、私のコレクションで萌え死ぬがいい。車でレースだと?この残業200時間、
今日は一体何曜日なんですか? の私を前にして、よくもそのような!
お前の時間も奪ってやる。ふふふのふ…」

 そうして、 そのバードマンと呼ばれた黒い男は、うさぎを片手に私に向かってマントを広げた。

「マジカ、僕と契約して!でないとバードマンは倒せない!」うさぎの叫び声が聞こえた。
俺は、出口を探しておろおろし、見つけた壁に向かって頭を打ち付けた。 夢なら早く醒めてくれ!

「そんな事しても、無駄だよ。お前も魔法少年になって戦うか、あいつのようになるか、
システムエンジニアには、そのどちらかしかねぇらしいんだ…」

 フィギアの山の中から顔だけを出し、恍惚の表情を浮かべながらマジデが、呻いた。

「バードマンは、本当は鳥男といって、ただのヲタクの車好きのシステムエンジニアだったんだ。
ある時から、自分の時間を仕事に奪われすぎて、貯まるお金をフィギアに注ぎ込むうちに、
人間としての心を奪われて、ヤフオク最強のIDを持つ、物欲の魔物、バードマンに
なっちまったんだ…」

 俺は、バードマンとやらに言った。

「どうしてサーニャはあるのに、エイラはいないんだ?それじゃあエイラが可愛そうだろう?」

 バードマンは、うろたえながら答えた。
「いや、実は第二期をまだ見てないから…いや、それは、仕様だ。仕様だから仕方ないんだ。
時間が足りないんだ、だから父さん…」

 俺はバードマンがうろたえている隙に、マジデの救出を試みた。
だが、マジデは恍惚の表情を浮かべたまま逝ってしまったようだ。
  第一話から逝っちまうなんて、本家よりありえねぇ…

「おい、うさぎ、一つだけなんてケチな事言うなよ。俺の夢は、とりあえず、そのマジデを救う事だ。
システムエンジニアも、レースも、ちょっとぐらいおまけしやがれ!」

 と、耳をつかまれぐったりとしていたうさぎの目が、突然真っ赤に発光した。再びあたりが暗くなり、
ハイパーコボルのコマンドの隙間から、学園のモンデヤル神父が現れた。一体何故?

「私は、WRCを戦うラリーナビゲーター、モンデヤル。今日からお前は、週末はラリードライバー、
平日はシステムエンジニアとして生きるのだ。そして、敵が週末の時間を奪いに来たその時には、
魔法少年、マジカとなって、親戚を一人死んだ事にして休みを取る。わかったかね?」

 なんなんだ、一体?気が付くと俺は学ランに、下半身競泳水着一着の姿となり、
アイパッドを手にしていた。

「おい、こんなのありかよ!俺はレースがやりたかったんだ。ラリーってなんだよ?」

 と、先ほどから一人でぶつぶつ言っていたバードマンが、こちらに向き直って、うさぎを投げてよこした。
と、うさぎは突然巨大化し、バニーガール姿にヘルメットを被った男が現れた。

「ラリーの事なら、このうさぎに聞くといい。ふふふ、坊主、契約しちまったんだなぁ また会おう!」
(違います、あのエクセルのセルのZの無限羅列はキーボ−ドに突っ伏したまま眠ってしまって
入力してしまったのではなくて仕様なんです。本当です…)と呟きながら、
鳥男=バードマンは去っていった。

 俺は、うさぎに向き直った。

「あんた、誰?」

「俺は、ウサ男。週末はラリードライバー。仲間はバニーTと呼んでいる。なあ、兄弟。」

「いや、意味わかんないし。」

「詳しくは、そのアイパッドでユーチューブひっぱって、樋口鍼灸院自動車部で検索して…」

ザクッ!

久しぶりに目から火花が散った。この感覚は、いつもの女神様だ。ああ、メイカ、メイナ、久しぶり…

「魔法少年☆マジカ・マジデ…て、あんた、こんな汚い小説、売れるとでも思ってるわけ?」

「どう?結構本気で取り組んでみたんだけど。このバードマンとの対決は、その後
30年も続くんだよ。
そして、魔法少年はやがて、魔法中年に成長するんだけど、やっぱその筋の人の為にも、
競泳水着ははずせないかなぁって…」

「あんたさ、ところでラリーに出る準備してるわけ?」

「いやぁ、その後エンジンだけは修理をしてみたんだけど、どうかな。
今はラリーをつくるのもやらなきゃいけないし、 とりあえず、レガシーのエンジンを18000円で落札して、
送料が3000円。エンジンオイルがバルボリンの 5-50W、リッター398円×5=2000円。
こんなに投資して、突貫作業1.5日で完成。
まだテストランはしてないけど、結構音は静かでよさげだよぉ。まぁ、4/29のジムカくらいなら、
この仕様でも十分かなぁ…て。いけそうならそのまま新城も、あれ? 」

気が付けば、診療用極太針を俺の後頭部に残したまま、二人の姿は消えていた。
ついに見限られたのかもしれない。大丈夫、きっと結果を見ればまた帰ってきてくれる。
俺はいつだって、極貧ガタピシ仕様を使わせると誰にも負けない男なのだから。
そして、「魔法少年☆マジカマジデ」は、きっと大当たりするに違いない。

でもまぁ、そんな俺のスタイルではなくて、もう少しスマートにラリーに取り組んでくれる奴が
一人でも現れてくれたなら…

その時のためにこそ、俺はもっと稼いでおかなきゃならないと、思いを新たにした。


俺は、「魔法中年☆マジカマジデ 逆襲のSE、すみません、それも仕様です」の執筆に着手した。

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